椎間板ヘルニアについて正しく知って正しく改善

椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板が圧迫されることによって、その中にある髄核が後方に飛び出して神経を圧迫して起きる痛みやしびれ、感覚低下、筋力低下と言われています。

しかし、これは正確ではありません。実際には神経が圧迫されて起こるのは、感覚低下であって痛みではありません。

ではなぜ痛みが出るかというと、髄核が飛び出すことで、周辺の細胞や血管が傷つき炎症が起こり、それが神経を刺激して痛みを誘発します。

つまり、炎症が起きていなければ痛みは出ません。

ちなみに椎間板ヘルニアと坐骨神経痛は同じものではありません。詳しくは「坐骨神経痛について正しく知って正しく治す」をご覧ください

椎間板ヘルニア

誤診の多い椎間板ヘルニア

1995年、国際腰椎学会でVolvo賞を受賞したBoos博士の研究により、腰痛などの痛みやしびれがない健康な人の76%の人に椎間板ヘルニアが見つかるという結果が出ています。

現在では科学の進歩もあり、椎間板ヘルニアが腰痛の原因である確率はわずか3%と言われています。つまり、椎間板ヘルニアがあっても、それが原因で痛みが出る可能性は極めて低いということです。

そして、さらなる過ちを生む

しかし、注意しなければならないのは、実際に椎間板ヘルニアが原因で痛みが出ている人もいます

実は、この研究結果が整体やカイロプラクティック、接骨院の先生の間では神格化されすぎてしまい、病院で椎間板ヘルニアと診断された人が、病院の治療(主に牽引)では治らないからと言って、整体やカイロプラクティック、接骨院へ行くと、そこの先生は「椎間板ヘルニアが原因じゃなくて、お尻の筋肉が原因だよ」と、検査もせず言います。そして、お尻の筋肉を緩めるわけですが、実際は椎間板ヘルニアが原因なので、やっぱり治らないとなってしまいます。

当院に来る人では、こういう人がとても多いです。

なぜこんなことが起きるのかというと、病院にしても整体院にしても接骨院にしても「ベッドサイドの検査」を行わないからです。

ベッドサイドの検査とは、ちょっとした道具があればベッドの横で行える簡単な検査で、整形外科学検査法や神経学的検査と呼ばれる検査です。簡単な検査ですが、信頼性高い検査です。ただし一つの検査だけではなく、複数の検査を組み合わせることで初めて信頼性が上がります。一つ二つの検査しかしないところも多いです(例えば、仰向けで足を上げる検査だけ)。

これをちゃんと行えば、痛みやしびれの原因が神経根障害(椎間板ヘルニア)によるものなのか、筋肉によるものなのか見分けることが出来ます。しかし、そこそこ時間がかかるため医師は画像診断に頼り、整体や接骨院の先生は、上で紹介した研究結果を信頼しすぎているため、勉強不足なのか、ベッドサイドの検査がちゃんと出来きません。そして、どこにいっても治らないという人が出てきてしまいます。

筋肉が起こす痛みとしびれ

なぜ筋肉の問題と椎間板ヘルニアによる神経痛が間違われるかというと、図のように神経痛に似たような広範囲に痛みやしびれを出すからです。

図はそれぞれ、特定の一つの筋肉が原因で起きる痛みの範囲を示した図です。これを筋筋膜性疼痛症候群と言います。

確かに神経痛に似ていますが、実際は区別することが出来ます。例えば、

  • 椎間板ヘルニアであれば感覚の低下がみられるが、筋膜痛の場合、低下は見られず逆に過敏になっていることも多い。
  • 椎間板ヘルニアであれば反射(膝の下を叩くと膝が伸びる、など)の低下や筋力低下がみられるが、筋膜痛の場合は見られない。
  • 神経痛で起きる症状の範囲とは一致しない。

ベッドサイドの検査を行うと、これらを区別することが出来ます。

筋筋膜性疼痛症候群

神経痛と筋膜痛が混在していることもある

椎間板ヘルニアがあり、症状もある人は筋膜痛も併発している場合が多いです。椎間板ヘルニアが存在するということは、その周辺に間違いなく負荷がかかっています。だからヘルニアが飛び出すわけですが、当然その周辺には椎間板だけでなく筋肉もあります。その筋肉に負荷がかかっていない、なんてことはありません。ほとんぼの人は筋膜痛を併発しています。

そしてこれもまた、痛みやしびれを治しにくくしてしまっている理由になります。

病院では椎間板ヘルニアに対してだけ治療をし、整体院や接骨院では筋膜に対してだけ治療をする。実際にはどちらも併発しているので、両方一緒に治療しなければいけないのに、どちらか一方にしか対処しないので、片方の症状はすでに治っていたとしても、もう片方の症状が残っていると、患者さんとしては、症状の出る場所は変わったけど痛みやしびれがあるので、「治っていない」ということになってしまいます。

牽引治療は効果が出ないことが多い

牽引治療

病院などで行う一般的な牽引治療についてですが、たとえ本当に椎間板ヘルニアが原因だったとしても、効果が出ない場合が少なくありません。(椎間板ヘルニアがある骨の間を広げるという方法は正しい)

椎間板ヘルニアが起きている場所を引き伸ばすためには、その上下の骨をしっかりと固定して引っ張らなければ意味がありません。しかし、一般的な牽引治療では骨盤や肩を固定して、背骨全体を引っ張ります。

実は椎間板ヘルニアが起きている場所の周辺は、組織が固まって動きが悪くなっています。そして、他の部分の健康な背骨周辺は柔らかく柔軟性があります。

硬い部分と柔らかい部分が混在する一つの構造物(この場合は背骨)の端を持って引っ張ると、柔らかい部分が伸びて硬い部分はほとんど伸びません。だから肝心な椎間板ヘルニアがある場所は伸びていません。これでは治療効果がありません。

椎間板ヘルニアかも?と思ったらチェックするべき9つのポイント(腰椎)

もしかしたら、自分のこの腰や足の痛みやしびれの原因は椎間板ヘルニアかもしれない、と不安になっている人もいると思います。

やはり、本当に椎間板ヘルニアによる痛みだった場合、早く対処が出来るか出来ないかで、治るまでにかかる時間が大きく変わってきます。私の臨床経験上、対処が早ければ早いほど、治るまでにかかる時間は短くなっています。

もし、椎間板ヘルニアかもしれないと思ったら、まずはここで紹介することをチェックしてみて、多く当てはまるようなら、早めにちゃんと検査を受けてください。

椎間板ヘルニアは20代から増える

椎間板ヘルニアは、飛び出す位置によって内側性と外側性がありますが、そのほとんどは内側性です。椎間板ヘルニアがあるか確定するためにはMRIをとる必要があり、そのヘルニアが症状の原因になっているか判断するためにはベッドサイドの検査が重要になります。

男女比や好発年齢、好発高位は以下の通りです。

男女比は約2〜3:1,好発年齢は20〜40歳代,好発高位はL4/5,L5/S1間である。腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)

L4/5間とは腰椎4番-5番の間、L5/S1間とは腰椎5番-仙椎1番の間のことです。

椎間板ヘルニアによる症状は痛みやしびれだけと思っている人も多いと思いますが、それ以外にも体に異常が起こります。それは筋力低下と、感覚低下です。これらの問題について以下で詳しく説明いたします。

神経根障害の特徴(9つのチェックポイント)

椎間板ヘルニアによる症状は、痛みやしびれだけではなく、筋力低下や感覚低下を起こします。以下に紹介する症状に当てはまることがないかチェックしてみてください。

動作によって痛みが強くなる

腰椎椎間板ヘルニアの場合、以下のような動きをすると痛みやしびれが強くなります。

  1. イスに座った状態で、症状のある足の膝を伸ばしながらゆっくり上げていく。痛みやしびれが強くなれば陽性。
  2. 立位で症状がある足側に体(腰)を横に倒す(側屈)と痛みやしびれが強くなる。(症状の無い方に体を倒して痛みが強くなる(外側性椎間板ヘルニア)こともあるが、反対側に比べて発症する確率は少ない)
  3. 体を前に倒す(前屈)すると痛みやしびれが強くなる。

体の動かすことで、神経への負担が強くなり症状が強くなります。椎間板ヘルニアの場合、体を横に倒す、前屈する動作で神経への負担が増えます。体を反らす動作では、症状が悪化しないことがあります。

筋力低下

腰椎椎間板ヘルニアの場合、以下のような筋力低下が起こる可能性があります。

  1. 立位でつま先を上げ(床から離し)踵で歩く。この際に、症状のある側のつま先が下がる。またはほとんど上げられない。
  2. 立位で踵を上げ(床から離し)つま先立ちで歩く。この際に、症状のある側の踵が下がる。またはほとんど上げられない。
  3. 症状のある足の膝を伸ばす力が弱い。
  4. 症状のある足の親指を上にあげる力が弱い。

歩いている時に、つま先を地面に引っかける、膝を高く上げて歩く、つま先を踏切る際に力が入らない、なども筋力低下が起きている可能性を示します。

感覚低下

腰椎椎間板ヘルニアの場合、以下のような感覚低下を引き起こす可能性があります。以下のことを痛みやしびれが出る場所に対してしてみてください。

  1. 手の指の腹で撫でるように、痛みやしびれが出る部分に触れる。症状の無い側の足の同じ場所を、同じように指で触れてみる。症状のある側の足の方が、撫でられた感覚が鈍い。
  2. 爪楊枝などの先のとがったもので、1と同じように触れてみる。症状のある側の足の方が、チックっとする感覚が鈍い。

椎間板ヘルニアは末梢神経障害なので、感覚低下が起こります。感覚が反対より過敏(チクチクが強い)なのは末梢神経障害ではありません。

まとめ

もし、ここで紹介した要素に複数当てはまるのなら、一度、病院でちゃんとした検査を受けてください。その後も、その病院でしっかり対処してくれるなら良いですが、薬だけだとなかなか治らないかもしれません。

もし信頼できる治療院があるなら、そこで相談してみてください。それも無いような場合、なかなか良い治療院を自分で見つけるのは難しいかもしれません。良い治療院の見分け方として、初回にちゃんとベッドサイドの検査をしてくれる所を探してください。いずれ良くなるだろう、と思って対処が遅れると、どんどん治り難くなってしまいます。

当院ではしっかりと検査を行うため、画像に頼ることなく椎間板ヘルニアが起きている場所を特定することが出来ます。そうすることにって、牽引治療のところでも書いたように、しっかりと椎間板ヘルニアが起きている場所だけを固定して広げることが出来ます。また検査を行うことで筋膜痛を併発しているかどうかも判断でき、そちらにも対処することが可能です。だから当院の施術で効果がでています。

※効果には個人差があります

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