しびれは感覚の低下が引き起こしています【椎間板ヘルニア・坐骨神経痛】

例えば椎間板ヘルニアや坐骨神経痛でお尻や足に出るしびれ、頚椎症や胸郭出口症候群で腕や手に出るしびれなど。このような神経障害で、痛みは治ったけど、しびれが残っているという人がいます。今回はそんな痺れを改善するためにお勧めする訓練方法についてお伝えします。

しびれの種類

まず、しびれについてですが、しびれという言葉はいろいろな場面で使われるので、今回説明するしびれに関して、食い違いがないようにしておきたいと思います。しびれという言葉は次のような状態で使われることがあります。

一つは感覚が低下した状態。これは痛みや温度、圧や触れられたという感覚を感じにくい状態です。皆さん、一度くらいは歯医者で虫歯を治療する前に麻酔を打ったことありますよね。その麻酔が効き始めた時の状態に近いです。完全に麻酔が効いてしまうと、完全に感覚がなくなってしまうので、感覚の低下ではなく麻痺になります。だから効き始めの感覚です。二つ目は、ピリピリ、ジンジン、チクチク痛みが出ている状態。これは正座を長時間した後の状態に近いです。三つ目は、力が入らない状態です。これもしびれということがあります。

今回お伝えするしびれの状態というのは、一つ目の感覚が低下した状態のしびれについてです。この感覚の低下というのが、椎間板ヘルニアや坐骨神経痛などの神経障害で痛みが取れた後も残ってしまうことが多いしびれです。もし2つ目の、ピリピリジンジンチクチクというしびれがある場合、これは痛みと同じ感覚なので、まだ痛みを取るための治療が必要です。

感覚の低下としびれ

ここからが本題です。前述したように、しびれが残っているという人のほとんどが、感覚の低下を起こしています。その中でも触れられるという感覚や押されるという圧の感覚の低下が顕著に残っています。

その場合、しびれている場所と反対側の正常な方の同じ場所を触れて感覚を比べてもらうと、しびれがある方は、服の上から触られているような感じ、と言ったり、何か間に挟んで触れられている感じ、と例えたりします。

この触れられるという感覚や押されるという圧の感覚は、皮膚周辺についている神経の先端にある受容器(センサーのようなものです)が感じ取っています。そしてこの受容器の受容野(感じ取る範囲)は、体の部位によっておおよそ決まっています。例えば指先では1~2mm、前腕で30~40mm、太ももで40~50mmと言った感じです。どういうことかというと、例えば前腕で30~40mmと書きましたが、センサーが感じ取る範囲が30~40mmなので、その距離以下で2つの刺激を加えても、それぞれを判別することが出来なくなります。つまり、2点の刺激を2点として感じ取るには30~40mm以上離して刺激しなければなりません。これを2点識別覚と言います。ただ10代20代と若い人ほど、この感覚はもっと細かくなって、30mm以下でも判別できることがあります。

しかし、しびれがある人を検査すると、腕であれば40mm以上離しても、それを2点と判別することはできません。つまり、刺激を感じ取る神経の働きが低下してしまっているため、皮膚に入る刺激の感覚にムラが出来てしまいます。これが、しびれた感覚を引き起こしています。先ほど言った麻酔の効き始めのような感じです。

だから、痛みが取れても、この皮膚についている受容器の働きが低下したままになってしまっていると、しびれが残ってしまいます。だから、しびれを治すためには、この感覚受容器の感度を上げるための訓練が必要になります。

検査と訓練

ここからは検査と訓練のやり方を説明します。もし、ノギスを持っている人はノギスを使うと簡単です。無い人は爪楊枝や串を2本使ってやってください。検査する場所によって、離す距離は違いますので、以下の図を参考にしてください。

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やり方は簡単です。まずはしびれている場所とは反対側の健康な方の検査をします。ノギスや爪楊枝などを参考値をもとに一定の距離を空けて皮膚を刺激(軽く皮膚に当てる)して、2点を識別できる最小の距離を見つけてください。

坐骨神経痛 検査

健康な方の2点を識別できる距離が分かったら、今度はしびれている方で、同じように検査してみてください。おそらく、健康な方より2点を識別できる距離が広くなっていると思います。

この検査する場合は注意点がいくつかあります。一つは2点を出来る限り同時に、同じ強さで体に当てる事。ノギスだとこれが簡単にできます。二つ目、2点を感じ取れる距離の参考値を示しましたが、これは人によって違いがあります。先ほども言ったように若い人ほど距離は狭くなりますし、高齢になればその距離は広がります。なので、参考値はあくまで参考でしかなく、実際に感覚が低下してるか判断する場合は、健康な方の手や足の同じ場所と比べます。例えば、右腕で2点を識別できる距離が50mmだったとして、左側の健康な方を検査したらそちらも50mmだった場合、これは異常ではなく、その人にとっては正常な範囲ということになります。

三つ目、腕や足などは神経の走行の関係から、縦より横の方が2点を識別できる距離が短くなりますので、右は縦で検査したのに、左では横で検査して、その結果を比較しないでください。

四つ目、検査は1回だけでなく何回か場所を少しずらしてやってください。何度やっても健康な方より識別しにくければ感覚が低下しています。

これらに注意して検査をしてください。もし可能なら第三者にやってもらってください。自分でやるときは目をつぶってやると少し正確性が上がります。

訓練方法

もし、2点識別覚が低下していた場合の訓練ですが、これは検査がそのまま訓練になります。最初は2点を感じ取れる距離を離して刺激して、それを徐々に狭めていって感じ取れるかどうか、というのをひたすら繰り返します。

正直、個人的には、痛みよりしびれを治す方が、難しいと感じています。ですが、痛みは生活に大きな支障をきたす場合がありますが、しびれだけだと何とか出来てしまうことが多いんですよね。だから、痛みがなくなったからと言って放置してしまう人が多いように感じます。それで、いつまで経っても治らなくて、煩わしくなって当院に来るという人も少なくありません。だから、出来るだけ早いうちに、神経のトレーニングをしておくと良いと思います。

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