首から手にかけての耐え難い痛み。原因は椎間板ヘルニア?

頚椎症とは、首の骨や椎間板の変性、腱や靭帯の肥厚によって起こる神経障害です。主に、首から手にかけて痛みやしびれを引き起こします。加齢に伴って起こりやすいので、比較的、中年から高齢の人に多いです。

症状の強さは個人差がありますが、少し酷くなると日常生活にも影響が出ます。また、動作によっても症状の強さは変わりますが、ジッとしていても首から手にかけて痛みが出ていて、非常に不快な痛みで精神的なストレスになってしまっている人もいます。

※この症例で行っているアプローチは、この方の問診内容や検査結果をもとに考えて行った方法です。他の人に同じことをしても必ず効果が出るわけではありません。効果には個人差があり、アプローチ方法も個別に合ったものを行う必要があります。また問診票を見返しながら記載していますので、多少の記憶違いがある場合があります。

【症例:60代男性】
1週間前に朝起きた時に右の首が痛かった。この時は寝違えたと思った。徐々に右の肩や背中、腕、親指にも痛みが広がり、今では寝ていても起きていても常に痛い。

[主訴以外の症状]
腰痛

[本人の希望]
とにかく痛みから解放されたい。

[所見]()内は問題が推測できる場所。重要な情報に◎
・首を少しでも動かすと手まで痛みが走る。特に首を後ろに動かせない。(首)
・スパーリングテスト、ジャクソンテスト、共に陽性。(頚椎の神経根障害)◎
・右の肩、腕、手の感覚の低下、反射の減弱、筋力の低下がある。(頚神経5~8番、胸神経1番)◎
・頚椎5番-6番、胸椎1番-2番がそれぞれ交互に捻じれている。(頚椎、胸椎)
・巻き肩。(姿勢)

[施術]
明らかに頚椎の神経根障害が疑われます。仰向けに寝るだけで痛みが強くなるので、うつ伏せと右肩を上にして頚椎と胸椎の捻じれを調整。首の可動範囲がほんの少しだけ広がる。首の下部をアイシング。初日は首を動かすことがほとんどできなかったため、軽く頚部周辺を調整し肩が巻いてこないように胸や肩周辺の調整しました。頚部のアイシングを指導。

この時の痛みの強さ10/10

4日後(2回目)
症状は相変わらず。病院で検査を受けて来た。レントゲンで頚椎下部の骨の間隔が狭くなっていると言われた。後日MRIを取る予定。痛み止めの薬を飲むと、気持ち楽になった気がする。

スパーリングテスト、ジャクソンテスト陽性。肩から手の感覚低下、反射の減弱、筋力低下。初回と検査結果は同じ。

胸を張れるように腹部と胸部の調整後、頚椎と胸椎、首周辺の筋肉を調整。首の可動範囲が少しだけ広がる。

8日後(3回目)
自覚症状は変わらず。頚部の可動範囲が少し広がっている。短時間なら仰向けで寝ても症状が悪化しない。今までの調整に加え、仰向けで頚椎と胸椎の調整。

21日後(6回目)
MRIを撮った。頚椎5番と6番の間に椎間板ヘルニアがある。以前より仰向けで寝ていられる時間が長くなっている。3回目と同様に調整。痛み止めの薬が以前より効くようになった気がする。ただし薬が切れると痛みが戻る。

この時の痛みの強さ7/10

29日後(7回目)
前回の後から、一気に楽になった。右肩を下にして寝ると痛みが出ることがある。4日前から薬を飲んでいない。

この時の痛みの強さ3/10

35日後(8回目)
調子が良い。少し気になるが、日常生活に支障はない。ここで一旦、頚椎症に対する施術を終了。

この時の痛みの強さ0~1/10

【前回の後から半年後に再び来院】
症状が再発した。以前ほどではないが(痛みの強さ7/10)、常に首、背中、肩、腕に痛みがある。昨日、庭仕事をしているときに違和感が出だし、今朝起きたら痛みが強くなっていた。

スパーリングテスト、ジャクソンテスト共に陽性。腕の筋力低下。感覚の低下は少しだけあり。原因の場所は以前と同じだと考えられる。以前と同様に調整。その後4週間で5回の調整を行い、日常生活に支障がないレベルまで痛みが軽減しました。その後は1ヶ月に1回のペースでメンテナンスを提案しました。現在すでに1年以上経過していますが再発なし。

[考察]
明らかな神経根障害で、検査においても教科書通りの反応でした。ですが、椎間板ヘルニアが原因かと言われると、疑問があります。椎間板ヘルニアが見つかった位置は頚椎5-6番の間です(頚神経6番)。神経学の検査では頚神経5番~胸神経1番までの広い範囲に問題が起きていました。また、神経は圧迫の力に対しては非常に強く、圧迫されることによって痛みやしびれが起こるという生理学はありません(医学書にちゃんと書かれています)。神経障害により痛みやしびれが起こるのは、神経周辺で炎症が起こり、そこから出た化学物質が神経を刺激して痛みやしびれが起こります。今回の場合で言うと、頚椎に負荷がかかり(それが証拠に、骨の間が狭くなっていたり、椎間板ヘルニアが見つかっています)、関節同士がこすれたりして炎症を引き起こし神経を刺激して痛みが出ていたと考える方が自然だと思います。それなら椎間板ヘルニアのある場所だけではなく、もっと広い範囲の神経症状が起きていとしても不思議ではありません。

神経根障害の場合、炎症が起こっているため、アイシングを行った方が痛みの軽減と早期回復に繋がります。それに加えて、首を動かす際に神経に負荷がかからないように、関節の動きや筋肉の調整、姿勢の調整を行っています。あとは神経の修復に必要なビタミンB12を含む、ビタミンB群を普段から摂るように指導しました。

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