【太ももの裏の痛みとしびれ】病院での診断は椎間板ヘルニア。しかし実際は、、、

下の図の範囲に痛みやしびれがあり、病院では腰椎椎間板ヘルニアと診断されている方の相談がときどきあります。椎間板ヘルニアは神経根障害ですから、末梢神経が障害された時に起こる症状が出ます。末梢神経が障害された時に起こる症状とは

1.「皮膚の感覚が鈍くなる(感覚の鈍麻)」
2.「腱を叩くと無意識の体が動く反応が弱くなる(反射の減弱)」
3.「力が弱くなる(筋力低下)」

それに加えて「痛み」や「しびれ」が起こることが多いです。ただし、痛みとしびれは、筋肉の異常や血流障害でも起こるので、これだけでは神経障害かどうかは判断できません。だから、上の3つの症状が出ていないか検査する必要があります。

椎間板ヘルニア

ベッドサイドの検査が重要

背骨から出る神経(末梢神経)はそれぞれ分布先が決まっています。例えば、椎間板ヘルニアが起こりやすい腰椎5番と仙骨の間(L5-S1間)から出ている腰の5番目(L5)の神経であれば、下図の赤い範囲に痛みやしびれの症状があり、その部分の皮膚の感覚の低下が起こります。そして、足を横に広げるときに使うお尻の筋肉(中殿筋)や足の親指を上に上げる筋肉(長母趾伸筋)の力が弱くなります。L5の反射はありません(正確には後脛骨筋がある)。

L5腰椎椎間板ヘルニア

このように、どの範囲に症状があって、どういった障害(感覚の低下や筋力低下)が起こっているかが分かれば、神経が障害されている場所をおおよそ見当をつけることが出来ます。その検査は整形外科学検査法や神経学的検査と呼ばれるもので、高価な器具を使わず、ベッドの上や横で行うことが出来ます(ベッドサイドの検査)。つまり、CTやMRIを使わなくても、神経が障害されている場所が分かるということです。本来、椎間板ヘルニアでMRIを撮るのは、ベッドサイドの検査で異常が見られた場合に、それが正しいかどうかを最終確認するために撮ります。しかし、ベッドサイドの検査には時間がかかるため、実際に病院で行われることは少なくなり、ベッドサイドの検査を行わずにMRIを撮ることが多いです。

成人で腰や足に痛みやしびれの無い健康な人でも、75%以上の人に腰椎の変性や椎間板ヘルニアなどが存在しているという研究データがあります。つまり椎間板ヘルニアがあるからと言って、痛みやしびれを起こすとは限りません。だから、MRIで椎間板ヘルニアが見つかった人でも、ベッドサイドの検査を行ったら、椎間板ヘルニアのある場所と、症状の出ている場所が一致しないということが起こります。一致しないということは、その症状が「椎間板ヘルニアとは関係ない」ということになります。最初にも言いましたが、痛みやしびれだけなら、筋肉の異常や血流障害でも起こります。つまり、症状の原因は、筋肉か血流障害と言うことも考えられるわけです。

痛みの原因と対処

最初の画像の痛みやしびれに戻ります。痛みやしびれの範囲は、人によって多少異なりますが、お尻の下部から太ももの裏が痛いと訴えることが多いです。そして椎間板ヘルニアの検査を行うと陰性という結果になります。

椎間板ヘルニア

この図の範囲の痛みやしびれは、正直、知識や経験のそこそこある治療家なら、すぐに「腰椎椎間板ヘルニアじゃないだろうな」と思うところではありますが、必ず、検査を行います。たとえ、病院で腰椎椎間板ヘルニアの診断を受けていても検査をします。なぜこの図を見て、腰椎椎間板ヘルニアじゃないと思うのかと言うと、この範囲の皮膚の感覚を支配しているのが、腰椎から出ている神経ではなく、腰椎の下にある仙骨と言う骨盤の一部から出ている神経が支配している範囲だからです。そしてそこには椎間板がありません。だから腰椎に椎間板ヘルニアがあったとしても、症状とは無関係ということが、検査をする前から想像できます。それでも検査をするのは、腰椎椎間板ヘルニアが原因ではない、ということを確かめるためです。

では、この図の範囲にある痛みやしびれが椎間板ヘルニアじゃなかったとしたら、何が原因なのか考えなければなりません。だからさらに検査をします。どのように体を動かすと痛みが強くなるのか、どのような姿勢なら楽になるのか、など。そこから問題の原因を推察します。

そうして見つかる原因で多いのが、太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)の内側の半腱様筋(図の真ん中の筋)と半膜様筋(図の左の筋)の異常です。

ハムストリングス

ハムストリングスの問題で今回のような症状を訴える場合、左右でハムストリングスの張りが顕著に異なっていることが多いです(症状がある方が強く緊張している)。うつ伏せになり、第三者に左右のハムストリングスを手の平で押すように触ってもらうと、おそらく一般の人でもその差が分かると思います。ゴムを強く伸ばして張っているような硬さが見られます。

症状を患っている期間が長いと、一回で大きな改善することはあまりありませんが、10日間くらい指導したハムストリングスのエクササイズを行ってもらうと、症状が徐々に良くなるという変化が起こります。このような変化が起これば、原因はハムストリングスでほぼ間違っていないと考えて良いと思います。

エクササイズの方法は、ハムストリングスを緩めればいいのですが、引き伸ばされるように硬くなっている筋肉を、一般的なストレッチで伸ばしてしまうと、うまく緩んでくれないので、一点を押すような圧で60秒~90秒押す方位が良いです。その際は膝を伸ばしたままではなく、曲げた状態で行うとより効果的です。だから、硬くなっているハムストリングスの下に、テニスボールを置いて、椅子に座ってテニスボールに体重をかけるというやり方をお勧めします。

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