腰が痛くて布団から出るのに5分以上かかってしまう

長時間、寝ていたり、座っていたり、その場で立っていたり、など、体を動かさないでいると、動きだしに痛みが出ることがあります。これは筋肉が固まってしまい、血流が悪くなり、老廃物が蓄積してしまうためです。体を動かしだしてしばらくすると、血流が回復して痛みもなくなります。

※この症例で行っているアプローチは、この方の問診内容や検査結果をもとに考えて行った方法です。他の人に同じことをしても必ず効果が出るわけではありません。効果には個人差があり、アプローチ方法も個別に合ったものを行う必要があります。また問診票を見返しながら記載していますので、多少の記憶違いがある場合があります。

【症例:70代男性】
2年以上前から、毎日、朝起きる時だけ腰に強い痛みが出る。起き上がるまでに5分以上かかってしまう。起き上がってから、しばらく普通に生活していると痛みがなくなる。そのあとは、腰を曲げたり捻じったりしても一切痛みが出ない。

[主訴以外の症状]
肩こり
右膝の痛み

[本人の希望]
朝、すぐに起きられるようになりたい。

[所見]()内は問題が推測できる場所。重要な情報に◎
・腰の骨のカーブが減少して、関節が固まっている。(腰、骨盤)
・体を曲げたり、反らしたりしてもらうと、痛みは出ないが、腰椎周辺がほとんど動かず、背中の上の方や膝を使って、体を動かしている。(背骨、骨盤、膝)◎
・お尻の筋力が弱い。(殿筋、運動野)
・腰の図が書かれた用紙を渡し、私が患者の腰の部分を触れて「図のどの辺りか」と聞くと、私が触れている場所と、本人が感じている場所に大きなずれがあることが分かる。(一次体性感覚野)◎
・「骨盤を前後傾するように動かしてください」というと、意識的に骨盤を動かすことが出来ない。(筋肉、感覚野、運動野)◎

ホムンクルス

[施術]
殿筋、腰周辺の筋肉、腸腰筋などを緩めてから、固まって動かなくなっている腰の骨や骨盤を調整して柔軟性をつける。立位で、骨盤を前後傾させるトレーニングを行うが、うまく出来ないので、仰向けに寝た状態で行う。やり方は、膝を立てて仰向けに寝た患者の腰の下に私の手を入れ、私の手を腰で押しつぶすように力を入れ、骨盤を後ろに倒す。次に私の手から腰を離すようにイメージさせ、骨盤を前に倒す。
腰を曲げたり反らしたりする際に、膝を曲げないように、股関節周辺の調整と動作の調整。初日はこの2つの動きを体で覚えてもらうことに重点を置きました。そしてそれを自宅でも行うように指導。

痛みの強さ7/10

[7日後](2回目)
少し良くなったような気がするが、朝起きるときに腰の痛みが出る(痛みの強さ6/10)。
骨盤の動きを確認すると、少しだけ動かせるようになっているが、まだまだ意識的にうまく動かせていない。初回と同様、筋骨格を調整した後に、骨盤と膝の運動を行う。

[14日後](3回目)
ちょっとだけ良くなったような気がするが、朝起きるときに腰の痛みが出る(痛みの強さ5~6/10)。
今回から、今までの調整に加え、モーションガイダンスを使って意識的に腰と骨盤を動かすトレーニングを追加。(写真は頭につけていますが、これを腰につけて行いました。)

平衡感覚訓練

[21日後](4回目)
腰の痛みが減った実感がある。以前より早く起き上がれるようになった(痛みの強さ3/10)。
骨盤の運動も以前よりスムーズになってきている(完璧ではありません。年齢相応だと思ってください)。膝の痛みも最近はあまり出ていない。目に見えて効果が出て来たので、自宅でのエクササイズを続けるようにお願いして、来院頻度を減らすことにしました。

[35日後](5回目)
少し気になるが、以前のように起き上がるのに時間はかからなくなった。運動は以前より頻度が減ってしまっていると言いますが、今のところ再び悪化するようなことは一度もない。

[考察]
腰や骨盤を意識的に動かせなかったので、血流が悪くなりやすい状態だったと思います。そして寝ているときに腰が圧迫されて、症状を悪化させていたのではないでしょうか。起き上がってしばらくした後に痛みが出なかった理由は、体を動かすと腰は動いていなくても、周辺の筋肉が動いたり、体温の上昇で、腰周辺の血流も保たれていたのかもしれません。

以上のように考えて、腰の動作の回復させることを行いました。結果、腰痛は改善しました。

膝の痛みは、腰の動きを代償して、動かし過ぎていたためだと思います。だから、腰が動かせるようになり、膝の代償動作が減り、痛みがなくなったと考えられます。

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