腰痛を正しく理解すると対策が分かる

実は腰痛はとても複雑だということをご存じですか?

例えば2人の人が、全く同じ場所に痛みがあったとしても、原因が同じとは限りません。

腰を曲げることが出来ない人、反らすことが出来な人、捻じることが出来ない人、痛みが出る動きも一人一人違います。

でも「腰が痛いから腰が原因でしょ」と思うかもしれませんが、実は腰痛の原因が腰にあること自体が少なく、他の場所が原因であることの方が圧倒的に多くあります。

腰痛

腰痛の原因は腰ではない

「腰痛の原因は腰ではない」

もしあなたがいろいろな整体院や治療院に行ったことがあるのでしたら、この言葉を聞いたことがありませんか?

治療家であれば、ほとんどの人が知っている(というか全員が知っていないと困ります)ことなんですが、一般の方にはまだまだ信じられない言葉かもしれません。

例えば腰を丸めて座っていたら腰が痛くなったとします。これだけ聞くと「姿勢が悪かったことが原因って言うんでしょ。それはちょっとズルくない」と思う人もいると思います。はい、そうは言いません。

これが通ってしまうなら、腰痛に限らず、ほとんどの痛みの原因が体にないことになってしまいます。

だから「姿勢が悪かったことが原因」とは言いません。もちろん姿勢は大事ですが、ここでは姿勢以外の話をします。

血流が悪いと腰痛が治らない

あなたも長時間座っていて腰が痛くなたことが一度くらいはありますよね。それは一時的なものでしたか。それとも、その後も腰の痛みや不調が続きましたか。

もし一時的なものだったとするならば、その原因は一定時間、腰を動かさなかったことによって血流が悪くなってしまったため起きた腰痛だと思います。この場合、そのあとに治療を受けに行こうとはあまり考えないですよね。そうではなく、問題なのはその後も続く腰の痛みや不調です。この場合、原因は他にあり、こういう人が病院や整体へ行きます。

一時的に腰が痛くなるだけの人は、その後、日常生活の動作の中で固まった筋肉がほぐれて血流が回復して痛みが取れています。一方、その後も腰の痛みが改善していない人は、腰の筋肉がいつまでもほぐれずに血流が回復しないため痛みが続いてしまいます。

つまり、腰の筋肉がほぐれない原因がどこかにあることになります。通常、体を曲げたり反らしたりすると、腰の筋肉が伸びたり縮んだりします。長時間座った時に腰痛が一時的にしか起こらない人は、普段の生活の動作の中で腰の筋肉が伸び縮みしています。それで筋肉がほぐれて血流が良くなり痛みが取れます。

ですが「腰の痛みが取れない人だって、普段の生活の中で腰を曲げたり伸ばしたりしている」と思いますよね。

腰が動いていないから腰痛になる

痛みが取れない人は、実は腰を動かしているつもりでも腰が動いていません。腰ではなく他の部分が腰の動きを代償して、あたかも腰が動いているように見えているだけです。

次の写真を見てください。2枚とも体を後ろに反らした写真です。一方の写真は、腰がほとんど動いていません。どちらの写真の腰が動いていないか分かりますか。

腰伸展2
A
腰伸展1
B

腰が動いていないのは「A」の写真です。膝を曲げて腰を反らしているように見せかけています。これではいくら普段から体を動かしていたとしても腰の筋肉は使われていないことになります。そうすると筋肉が固まって血流が悪いままになるので腰痛が治りません。

この場合の対処法は、腰を反らせない原因を見つけて、腰を反らせるようにしてあげることです。そうすることで腰の筋肉が動き血流が良くなって腰痛が治ります。

ちなみにこの写真のように膝を曲げてしまう場合、股関節~お腹の前側が硬くなって、腰を反らすことが出来ていないのが原因です。この場合の腰痛を改善するには、硬くなっている股関節やお腹の筋肉を緩めることで、腰の筋肉が動くようになり筋肉がほぐれるようになります。

腰が動き過ぎても腰痛になる

もしかしたら、「腰が動くということは腰に負担も増えるのでは?」と思う人もいるかと思います。当然ですよね。しかし、正しく体を反らすことが出来ていれば、腰だけに負担がかかることはありません。

体を反らすという動作は腰だけが反るわけではありません。もう一度、Bの写真をみてください。足首が曲がり、膝を少し曲げ、股関節を前に出し、腰を反らし、胸を反らし、首を反らして、体全体を使って腰を反らしています。

こうすると体全体が弓なりにしなるので、一か所に負担がかかることはありません。今度はBとCの写真を見てください。

腰伸展1
B
腰伸展3
C

Cは腰だけを反らし、その他の足首、膝、胸、首がBと比べるとほとんど動いていないことが分かります。これでは腰だけに負担が大きくかかってしまいます。つまり体の固まっている部分が多ければ多いほど腰にかかる負担も大きくなります。

だから、関節や筋肉が固まらないように普段から体を動かしておくことは、とても大切になります。

腰痛を治す、あるいは予防するには

今言ったことは、腰を曲げる、腰を捻じるときの腰痛でも考え方は同じです。もっと言うなら、筋肉や関節を動かしたときの痛みは、その動作の連動性を妨げている部分の動きを改善し、体全体の連動性をスムーズにすることが治療法になります。

本来、人の体はどこか一か所だけに負担がかからないように全体が連動して動いてくれます。しかし、何らかの理由でその連動性が崩れる(筋肉や関節が固まる・骨の変形・など)と、負荷が偏ってしまい故障の原因になります。

だから腰痛を治すためには、その連動性が崩れている部分を見つけて改善させてあげなければなりません。そして、その連動性を崩している場所は、ほとんどの場合が腰以外のところにあります。だから、「腰痛の原因は腰にはない」ということになります。

ただ、もちろん例外もあり、腰自体に原因があることもあります。その場合は当然ですが腰を調整しなければなりません。

ぎっくり腰

いままでは一般的な腰痛について説明しましたが、他にも腰痛の代名詞と言えるものがあります。それはぎっくり腰です。医学的には急性腰痛症と言います。ドイツ語では魔女の一撃(Hexenschuss:ヘクセンシュウス)と、なんだか怖い名前が付いています。それほどまでに衝撃的だということです。

これは一般的な腰痛と違い対処方法も変わってきます。

ぎっくり腰になった人の多くはこう言います。「特に大したことはしていない」。そうなんです。普段からしているちょっとした動作でぎっくり腰を起こします。普段であれば問題なくてしていたことで激痛が走り、あまりの痛さに身動きが取れなくなってしまいます。

なぜ、大したことをしていないのに激しい痛みが襲ってくるのでしょうか。実は、痛みが出た時の動作一つをとれば大したことはないのですが、その一つ一つの大したことのない負荷が積み重なると、塵も積もれば山となるというように、いずれ大事になってしまいます。

ちょっとした腰への負担でも筋肉には小さな傷が付きます。この小さな傷は痛みを感じさせるほどのものではなく、本来ならすぐに回復してくれます。しかし、これが最初にも話したように、普段の生活の中で腰の筋肉が動かなくて血流が悪くなっていると傷が治りません。傷を治すには血液が運んでくる酸素や栄養が必要になります。それで細胞を修復することができます。しかし、血流の悪くなっている筋肉には酸素や栄養が届かないので、回復が間に合わずどんどん傷が蓄積していきます。するとその小さな無数の傷が、あるとき繋がり大きな傷を作ります。そして起きるのがぎっくり腰です。つまり、ぎっくり腰が起きた時、筋肉には大きな傷がつき炎症を起こしています。それで激しい痛みが起こります。

冷やす?それとも温める?

ぎっくり腰になった時、あなたならどうしますか?

例えば、一般的な肩こりや腰痛なら、お風呂に入ったりして体が温まると楽になりますよね。ですが、スポーツ選手が怪我をしたときにアイシング、つまり冷やしているのを見たことはありませんか。

そうなんです。体を痛めた時は、温めた方が良いときと、冷やした方が良いときがあります。ぎっくり腰になった時はどちらが正解だと思いますか。この回答は意外と分かれるのではないでしょうか。当院にもぎっくり腰で来る人がたくさんいますが、温めたという人もいれば、冷やしたという人もいます。あるいは何もしていないという人もいます。

ぎっくり腰を起こしたときの正解は「冷やす」です。

炎症が起きている時は「冷やす」が基本になります。そうすることによって炎症の広がりを抑えることができます。炎症が広がると痛みも広がってしまうので、それを防ぐために出来るだけ早く冷やすようにしましょう。

炎症の定義は疼痛・発赤・熱感・腫脹、そして機能障害を伴っているものです。この中の機能障害とは、体が本来もっている機能が正常に働くなっている状態のことを言います。ぎっくり腰に伴う機能障害とは、「腰を正常に動かすことができない」ということになります。ぎっくり腰に限らず、打撲や捻挫の時もこの5つの兆候が見られた場合、炎症が起きているので「冷やす」というのが正解になります。覚えておいてください。

では、どういうときに温めるかというと、炎症が起きていない肩こり腰痛などの筋肉のコリや痛みに対しては温めます。そうすることによって血流がよくなりコリや痛みが楽になります。

冷やし方

冷やすには氷水を使います。専用のアイシングパックがあればそれでいいのですが、なければ氷嚢やビニール袋に氷と少量の水を入れて患部を冷やしてください。よくアイスクリームを買ったときなどについてくる保冷剤でも良いですか?と聞かれますがダメです。保冷材はカチカチに固まってしまっていますので、これを肌に当てると、温度が0℃以下になり凍傷になるリスクがあります。なので直接氷を当ててはいけません。氷嚢やビニール袋を使う際には必ず水を入れてください。

これは実際に当院で使っているアイシングパックです(スポンサーリンク)。

患部にアイシングパックなどの冷却パックを直接当てます。ビニール袋に氷水を入れて冷やす場合は薄いタオルを1枚挟んでください。もしぎっくり腰ではなく怪我などで患部を冷やす場合で、傷口があれば必ず流水で洗い流してから冷やしてください。

最初は強い冷感を感じます。そして徐々に焼けるような熱感に変わり、さらにしばらくすると感覚がなくなっていきます。ここまで冷やす必要があります。だいたい15~20分間くらいです。そしたら一旦、冷却パック 外します。そして1~2時間くらい間隔を空けて再び冷やします。これを24~72時間繰り返しましょう。そうすることで炎症の広がりを抑え、痛みを軽減し回復が早くなります。必ず冷やす時間、空ける時間を守るようにしてください。冷やしすぎてしまうと逆に治りが遅くなります。

体を動かして回復を早める

ぎっくり腰でも痛みの程度は様々です。身動きがほとんどとれないほどの重症の場合もあれば、壁や手すりに摑まればなんとか歩くことができる場合もあります。

当院では、ご連絡をいただいた際に痛みの程度を次のように確認します。「一人で立って歩くことはできますか?」

もし答えが「はい」であれば予約を承ります。しかし「いいえ」だった場合、アイシングの方法を伝えて1日から最大で2日間は無理をせず安静にするように言います。その後もう一度連絡してください、と伝えます。

なぜ安静にするのは2日までなのかというと、長い期間安静にしていると治りが悪くなってしまうからです。最初の腰痛のところでも話しましたが、動かさない筋肉は血流が悪くなり治りにくくなります。ぎっくり腰の場合も同じで、安静にしている時間が長くなりすぎると血流が悪くなって、治りが遅くなったり、予後が悪くなってしまいます。

痛みが残っていたとしても、2日以内に体を動かし始めましょう。普段の日常生活の出来る範囲のことで構いません。長期間の安静は避けましょう。

慢性腰痛の原因は脳にある

もう一つ腰痛についてお話します。それは慢性腰痛についてです。あなたは最初に説明した一般的な腰痛が繰り返し起こることが慢性腰痛だと思っていませんか。実は少し違います。

3ヶ月以上続く痛みのことを慢性痛と言います。そしてそれは、筋肉や骨格を調整して腰痛の原因を取り除いても痛みが治りません。

これを聞くと、「私は3ヶ月以上整体に行ってて治らないから慢性腰痛だ」となる人もいると思いますが、これはちょっと判断が難しくなります。その整体の施術は本当に腰痛の原因に対処できていたのかどうか、それと、あなた自身が腰痛を改善するために普段から姿勢を意識したり、運動をして筋肉を動かせているのかどうか、ということも関わってくるからです。この二つが正しく行われた時に腰痛が治るのなら、それは慢性腰痛ではなく対処方法に問題があったことになります。

この慢性腰痛を引き起こす要因は、繰り返し何度も何度も腰痛を起こすことで発症したり、ぎっくり腰の後の対処がしっかりと出来ず、長い間安静にしてしまったりすることで起こります。

一般的な腰痛やぎっくり腰と慢性腰痛の違いは、その原因の場所です。分かりにくいですよね。一般的な腰痛やぎっくり腰の原因は、体のどこかにあります。ですが慢性痛の原因の場所は体にはありません。

実は脳が痛みを出しています。本来痛みはケガをしたことを脳に伝えるために発せられるのですが、それが何度も繰り返されたり、長い時間感じていると、脳がその痛みを学習して常に痛みを感じているかのように誤作動を起こします。これが慢性痛です。こうなってしまうと、たとえ体の問題を取り除いても、痛みを出しているのは脳なので痛みが取れません。

このことについて、非常に分かりやすく説明している動画がありますのでそちらをご覧ください。この動画では慢性痛の治し方も説明してくれています。

痛みを理解しよう-10分でわかる痛みの対処法

他にも腰痛の原因はある

ここまでで説明したのは筋骨格系の問題と慢性腰痛についてでした。しかし腰痛はその他の問題でも起こります。例えば精神的なストレス、食生活の乱れ、ホルモンバランスの乱れ、なども腰痛を引き起こします。

筋骨格系の問題だけなら、整体院で改善することも可能ですが、それ以外の原因だとすると生活習慣の見直しや精神面のケアが必要になります。そういった区別というのはとても難しいものです。だから腰痛はとても複雑な生活習慣病になります。

できたら普段からならないように運動をしたり食事を意識したりしましょう。

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