半年間で左手を5回も怪我。何度も怪我をするのには理由があるのか?

同じ場所ばかり怪我をする人がいます。

皆さん、自分の手がどこにあるか目を閉じていても分かりますか?
例えば、眼を閉じて、下の写真のように、体の前で肘を広げた状態で、左手の人差し指の先と右手の人差し指の先を、ミスすることなく一発で合わせることが出来ますか?
左右、全ての指で同じことが出来ますか?


信じられないかもしれませんが、自分の手がどこにあるのか、ちゃんと分かっていない人がいます。

※この症例で行っているアプローチは、この方の問診内容や検査結果をもとに考えて行った方法です。他の人に同じことをしても必ず効果が出るわけではありません。効果には個人差があり、アプローチ方法も個別に合ったものを行う必要があります。また問診票を見返しながら記載していますので、多少の記憶違いがある場合があります。

【症例:40代女性】
1ヶ月前に左足をひっかけて前方へ転倒。両手を着いたが、左の手首を捻挫した。今は日常生活にほとんど問題ないが、朝、ベッドから体を起こす時に左手をつくと痛いので、起き上がりずらい。

話をよく聴くと、この半年の間で左の上肢を何度も怪我をしていることが分かりました。「包丁で左手の人差し指を切った」「体をタオルで拭いているときに、左手の小指を自分の膝に強く当ててしまった(第一関節に強い痛み)」「左手を伸ばしたときに、人差し指と中指を壁に引っ掛けて後ろに強く捻じって痛めた」「理由は覚えていないが、左の肘が痛かったこともある」。

左の小指は、髪を洗っている時に、頭に強く当ててしまうことが何度かあるため完治していない。肘は、日常ではほとんど問題ないが、重い荷物を左手で持った後に少し痛みが出る。

[主訴以外の症状]
肩こり
頭痛

[本人の希望]
手をついて体を起こせるようになりたい。もし左手ばかり怪我をする原因があるなら治したい。

[所見]()内は問題が推測できる場所。重要な情報に◎
~手首の痛みに関して~
・手を床に着くとき、手根骨(手の付け根の骨)が広がらない。手の平全体が床に密着せず、真ん中に少し隙間がある感じ。(手根骨)◎

~左手の繰り返す怪我について~
・目を閉じてもらい、左手の指を私が曲げたり反らしたりしても、どちらに動かされているか本人は分からない(固有受容器、一次体性感覚野)◎
・左手、左腕の二点識別覚(特定の部位を2点で触れた時に、それを2点と判別できる能力)の低下(固有受容器、一次体性感覚野)◎
・閉眼での指鼻試験、指鼻指試験、手の回内外検査、リズムに合わせて手を叩く運動、全て左で低下(左小脳)◎
・左半身の筋肉の張りが右に比べて低下(左小脳)◎

[施術]
前腕の筋肉を緩めて、左の手根骨を矯正し柔軟性をつける。左肩の調整。
モーションガイダンスを使って左上肢(肘と肩)をイメージ通りに動かすトレーニング。(固有感覚、小脳、運動野)
メトロノームの音に合わせて左手を動かす。(小脳)
左の手の低下している感覚のトレーニング。(固有感覚、一次体性感覚野)
初回は、手首の調整を主に行い、残った時間で、左手の感覚のトレーニングを行いました。まずは手首の痛みを取ることを優先しています。ホームワークとして、感覚のトレーニングを指導しています。

この時の手を着いたときの痛み:8/10(手を着かなければ0/10)

7日後(2回目)
左手を着いたときの痛みが少し減った。しかしまだ痛みがある。手を着いたときの痛み:6/10
手首のの調整をした後に、残った時間で左手の感覚のトレーニング。

21日後(4回目)
左手を着いて体を起こせるようになった。手を着いたときの痛み:1/10
今回は左手の感覚のトレーニングを主体にし、ホームワークを続けてもらうように指導し、1ヶ月間隔で様子を見るようにしました。

3ヶ月後(7回目)
左手首はすっかり良くなった。新たに左手に怪我もしていない。手の感覚や動きも以前より精度が上がっています。

[考察]
左手の感覚や動きに関する信号が、脳でちゃんと処理できていないことによって、動かしたときに自分のイメージと実際の動きにズレが生じていました。そのため、手の動かした際の動きが、小さかったり、大きかったり、壁や物にぶつけてしまって怪我をしていた可能性が考えられます。

今回は、左手を動かした際の、自分のイメージと実際に動きにズレが生じないようにトレーニングを行いました。

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