呼吸が浅い、息苦しい。間違った呼吸トレーニング【自律神経失調】

息苦しさで悩んでいて、病院や整体や接骨院やヨガやジムなど、いろんなところに行って、呼吸のトレーニングをたくさんしたのに、楽になるどころか、むしろ悪くなっている気がする、なんて言ことはありませんか?

自律神経の相談に来る人で、呼吸が浅い・息苦しいさを訴える人がとても多くいらっしゃいます。主訴として呼吸の問題を訴える人もいますが、他に主訴があり、付随して呼吸の問題を抱えている人もたくさんいます。

呼吸は交感神経が優位になると浅く早くなり、副交感神経が優位になると深く遅くなります。このことから自律神経を整える方法として呼吸を利用する人がたくさんいます。テレビや雑誌などのメディアや、整体院や接骨院などの治療院でも、自律神経の整え方として呼吸を指導することがよくあります。しかし、自律神経を整えるために行っている呼吸のトレーニングで、逆に自律神経を乱してしまう人もいます。

呼吸の問題を抱えている人の中には、複数の要因によって呼吸に問題を起こしおています。そういう人に呼吸の訓練ばかりをやらせると、意識的に呼吸筋を動かして行う呼吸(努力呼吸)を繰り返すことになるので、副交感神経が優位になるどころか、逆に交感神経を興奮させてしまいます。そして、それによって自律神経のバランスをさらに崩してしまいます。

呼吸が浅い・息苦しさを引き起こしている原因をしっかりと理解して、それに合わせた方法で対処を行うことが重要になります。

呼吸が浅くなる理由

呼吸浅くなったり・息苦しくなるのにはいくつか理由が考えられます。その理由を紹介していきます。

胸郭の動きの制限

胸郭とは心臓や肺を取り囲んでいる、肋骨・胸椎・胸骨などの籠上の骨格のことです。この胸郭には、背中側で上下の胸骨を繋ぐ関節、胸椎と肋骨を繋ぐ関節と、前側で胸骨と肋骨を繋ぐ関節があり、これらが動くことで胸郭全体を広げて、肺に酸素をたくさん取り込みます。

もしこの胸郭が広がらないと、酸素を取り入れるスペースが作れないので呼吸が浅くなります。息を吐いた状態から大きく息を吸った状態の胸郭の周囲の広がりは男性で3cm、女性で2cmくらいが目安になります。これよりも少ない場合は胸郭が広がっていない可能性があります。

胸郭の可動性は、姿勢の影響を受けます。猫背や肩が丸まった状態では、胸郭が広がらないので姿勢は重要です。

呼吸筋の問題

上で、胸郭を広げて酸素を取り入れると書きましたが、胸郭を広げる動力は筋肉になります。そのため筋肉が固まっていたり、うまく動かなかったりすると胸郭を広げることが出来ません。胸郭を広げる働きのある呼吸筋は以下になります。

  • 息を吸うときに使う筋肉(吸息)
    胸鎖乳突筋・斜角筋・僧帽筋・外肋間筋横隔膜
  • 息を吐く時に使う筋肉(呼息)
    内肋間筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋・腹直筋

赤い字で書かれた筋肉は、主に安静時の吸息で働く筋肉になります。もし、安静時に呼吸が苦しくなる人は、この筋肉がうまく働いていない可能性があります。この状態で意識的に深呼吸を何度もさせると、安静時の吸息筋がうまく働かないまま、その他の筋肉を意識的に強く動かすことになるので、呼吸の改善に繋がりません。そればかりか、他の筋肉がどんどん疲労してしまって、より悪化させてしまう可能性があります。

呼吸中枢の問題

普段、呼吸は意識せずに行うのが当たり前です。意識せず行われる体の機能は、主に自律神経の働きによるものです。だから呼吸も自律神経の働きによってコントロールされています。最初にも書きましたが、交感神経が優位になると、呼吸は浅く早く、副交感神経が優位になると呼吸は深く遅くなります。この呼吸をコントロールしている中枢がどこにあるかご存じですか?

呼吸中枢は脳幹の延髄というところにあります。普段、この呼吸中枢によって呼吸が苦しくなったりしないようにコントロールされています。この時は無意識に呼吸が行えています。しかし、何らかの理由で呼吸が苦しくなると、呼吸中枢より上位の大脳皮質を使って意識的に呼吸中枢に信号を送って呼吸を行うようになります。つまり、息苦しく感じて呼吸しているときは、延髄ではなく大脳皮質からの随意的(意識した)な信号によって呼吸がコントレールされるようになります。

この状態になると、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。例えば、呼吸をするために意識を使うため、その他の物事に対する脳の機能が低下してしまいます。それによって集中力や注意力が低下してしまいます。常に脳を使うことになるので、脳全体のパフォーマンスの低下に繋がります。それは不安や恐怖を抑えられなくなったり、我慢が出来なくなってイライラしたり、自律神経だけではなく精神面にも影響を及ぼしてしまいます。

まとめ

呼吸が苦しくなる要因は今言ったように主に3つ考えられます。自分がどこの問題によって呼吸に問題が起きているかしっかりと見極めて対処しないと、症状を悪化させてしまう可能性があります。特に慢性的に呼吸の悩みを抱えていると、中枢の働きにも問題が起こってしまいます。

ですが、ほとんどの人は呼吸だけの訓練して改善しようとします。それによって、楽になるどころは悪くなってしまうケースがあります。

最後に当院では、どういう風に検査をするか簡単にお伝えします。まずは骨格の問題を調べます。先ほども言いましたが、息を吐いた時と大きく吸った時で、どのくらい胸郭が広がっているかチェックしたり、その他の関節の柔軟性を実際に動かしてチェックします。

次に呼吸に関わる筋肉の硬さや動きをチェックします。これは実際に触ってチェックします。

最後に呼吸中枢の延髄の働きをチェックします。延髄には、呼吸中枢の他に、嘔吐、嚥下、唾液、心拍、などの中枢がありますので、それらの機能をチェックしたり、喉の奥の筋肉の張りを見たり、舌の筋肉の働きをチェックして、延髄の機能を総合的に判断します。もしここに問題があった場合は、ここから調整を始めます。

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