慢性腰痛と脳の関係|神経可塑性で見る最新の痛みの科学
慢性痛は「脳」が関係している?
腰の痛みが長期間続く「慢性腰痛」は、一般的には「姿勢の歪み」「筋肉の緊張」「運動不足」が原因と考えられがちですが、実は脳の働きが深く関与していることが、最新の研究で明らかになっています。
そのカギとなるのが、「神経可塑性(Neuroplasticity)」という脳の変化の仕組みです。
神経可塑性とは何か?
神経可塑性とは、脳や神経が長期に及ぶ経験や学習によって、働きや構造を変化させる特性のことです。本来は、運動や学習などによって、運動能力や学力を向上させる重要な働きをするのですが、慢性的な痛みが続くことで悪い方向にも変化してしまうことがあります。
このような「負の神経可塑性」が、慢性腰痛の持続や悪化の一因と考えられています。
体性感覚ホムンクルスとは?
人の脳には、「体性感覚ホムンクルス(Somatosensory Homunculus)」という身体の各部位の感覚が伝わる場所がマッピングされた地図のようなものが存在しています。これは、頭頂葉にある一次体性感覚野という領域に位置し、腰や背中の感覚もここに対応しています。(図左1948年/右2022年)

(doi.org/10.1038/s41586-023-05964-2)
慢性腰痛による脳の変化
慢性腰痛が続くと、ホムンクルスの「腰」に該当する部分がぼやけたり拡大(または縮小)したりすることがあります。これにより
- 痛みの位置があいまいになる
- わずかな刺激でも過剰に痛く感じる(痛覚過敏)
- 身体感覚がゆがむ(腰の位置がわからない・腰だけを動かすことが出来ないなど)
といった症状が現れます。
頭頂葉とボディーイメージ(身体イメージ)
頭頂葉は、感覚情報だけでなく「身体の空間的位置」や「ボディーイメージの統合」にも関与しています。慢性腰痛によって頭頂葉へ過剰に信号が送られることで、このボディーイメージが歪み、さらに動作の異常を引き起こして、痛みが強化される悪循環が起こります。
ホムンクルスが変化する理由
腰を動かしたり、腰に触れたりすると、その感覚(触刺激や動作に関する感覚)はホムンクルスの腰に該当する部分に伝わります。ホムンクルスに伝わる感覚が減ってしまうと、該当する部分の活動が低下してしまい、ぼやけたり縮小してしまいます。逆に、感覚が過剰に伝えられると、該当する部分が拡大してしまうことがあります。このようなことが起きてしまう要因は
- 長時間のデスクワークや車の運転で、腰を動かしていない(ぼやけ・縮小)
- 慢性腰痛による過剰な情報の伝達(拡大)
- 腰以外の部分が過剰に動いたり刺激されて、腰のホムンクルス以外のところが拡大(ぼやけ・縮小)
などがあります。
慢性腰痛に対する脳科学的アプローチ
通常の筋骨格の調整だけでなく脳の再学習=再マッピングを目的とした新しいアプローチが注目されています。
① 感覚再教育トレーニング
- 腰に触れて「どこを触られているか」を言い当てる練習
- 腰に強弱の刺激を入れて区別する練習
② プロプリオセプティブ・トレーニング

- レーザーポイントを使い、体の動きを視覚的に認識する
- 目を閉じて、体の感覚のみで動かしボディーイメージのズレを確認する
③カイロプラクティックアジャストメント
- 腰の固有感覚を活性化させることが出来る
まとめ|脳を「リセット」して痛みから解放される可能性
慢性腰痛を単なる「身体の故障」としてではなく、「脳と神経の再構築」として捉えることで、これまでとは違ったアプローチが可能になります。あなたの腰痛が長引いているのは、もしかすると脳が「痛みを覚えてしまっている」からかもしれません。
中央林間カイロプラクティックオフィスでは、最先端の器具をつかった感覚の再教育や脳トレーニングが可能です。もう一度“脳を正しく使う”ことが、痛みからの回復につながります。
諦めずに当院に一度ご相談ください。新しい希望が見えてくるかもしれません。
この記事を書いた人
中央林間カイロプラクティックオフィス 興津 尚之
カイロプラクター
日本カイロプラクティック徒手医学会 正会員
マニュアルメディスン研究会 正会員
公益財団法人 日本スポーツ協会 認定スポーツプログラマー
Bachelor of Engineering(工学)

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