慢性的な肩こりや腰痛が記憶力や集中力に影響?脳と痛みの意外な関係とは
慢性的な肩こりや腰痛のある人に、注意力や記憶力の低下が見られるという研究が複数あります。これは単なる偶然ではなく、痛みによって脳の構造や神経ネットワークの変化が関係していると考えられています。
ポイント
- 慢性痛があると、注意・意思決定・記憶などを司る、脳の前頭前野(PFC)や海馬の機能が低下する。
- 慢性痛があると、前帯状皮質(ACC)が過活動になり痛みに敏感になりやすい。
- 慢性痛があると、デフォルトモードネットワーク(DMN:何も考えていない時の脳の状態)の過活動により、集中力や作業記憶の低下を引き起こす。
- 長期にわたる痛みが「脳疲労」や「神経可塑性の変化」を引き起こす。
前頭前野(PFC)とは

PFCは前頭葉の一部で、脳の前方に位置しています。以下のような認知や社会性など「高次」な脳機能を担う重要な領域です。
- 意思決定
- 計画・予測
- 問題解決・論理的思考
- 注意の維持・切り替え
- 感情のコントロール
- 社会的判断・道徳的判断
- 自己認識・自己制御
- ワーキングメモリ
- 創造的思考
- 衝動の抑制
慢性痛が前頭前野(PFC)の活動を抑制
慢性的な痛みは、PFCの血流や神経活動を低下させることが報告されています。慢性痛によりこの部分の機能が低下すると、集中力の低下、判断力の鈍化、感情の不安定さなどが起きやすくなります。また以下で解説するACCとも密接に繋がっています。
前帯状皮質(ACC)とは

ACCは、大脳辺縁系の一部で、脳の中央やや前方、左右の大脳半球の間に位置しています。以下のような情動に関わる重要な役割を持っている領域です。
- 感情の制御
- 注意の切り替え
- 意思決定
- 共感や社会的行動
- 痛みの処理(特に「苦しさ」や「つらさ」)
ACCと痛み
痛みには以下の2種類の側面があります。
- 体に生じた侵害刺激(痛覚)
- その痛みをどう感じるか(情動的評価)
このうち2つ目の痛みの感じ方である「痛みのつらさ」を感じるのがACCの役割です。例えば同じ腰痛でも、ある人は「我慢できる」と思うのに対し、別の人は「耐えられない」と感じ強く苦しんでしまいます。この差にはACCの活動の違いが関わっていると考えられます。
ACCと感情のネットワーク
ACCは感情を処理する扁桃体や、前述した感情をコントロールする前頭前野(PFC)と密接につながっており、不安や恐怖が強いとACCが過剰に反応し、結果として痛みにも敏感になる、という悪循環を作りやすい特徴があります。
例:慢性腰痛 → 不安になる → ACCが活性化 → 痛みがつらく感じる
といったループです。
ACCの異常活動と神経可塑性
慢性腰痛の患者さんの脳をMRIなどで調べると、ACCの活動が過剰になっているケースが多いことがわかっています。すると、痛みの原因が治っても、ACCに「痛みの記憶」が残り、痛みが続くといった現象が起こります。
これはいわゆる「負の神経可塑性」によるもので、慢性痛を治りにくくしています。
対策
一番重要なことは、痛みを慢性化させないことです。そのためには、痛みを放置するのではなく、できるだけ早く対処することです。病院や整体、カイロプラクティックなどの手技療法も効果的かもしれません。
もし、すでに慢性化してしまい、PFCやACCに問題が起きてしまったら
- 有酸素運動(ウォーキング、ヨガなど)
脳血流を改善し、ACCの働きが安定。筋肉の血流が良くなりコリが取れる。 - マインドフルネス瞑想
扁桃体やACCの過活動を抑え、感情の安定を助ける。 - AVE(視覚-聴覚同調療法)※当院で体験できます。
特定の周波数の光と音のパルスを用いて、脳を優しく安全に様々な脳波パターンへと導く。 - 認知行動療法(CBT)
「痛み=悪いもの」という思い込みを修正し、脳の反応を書き換える。 - カイロプラクティックアジャストメント
カイロプラクターが行うアジャストメント(矯正)は、脳(主にPFC)の活動を平均で20%変化させることができます。
まとめ
慢性的な肩こりや腰痛は身体の問題だけではありません。PFCやACCなど脳の活動の変化により、痛みを長引かせ、さらに集中力や記憶力にまで影響を及ぼしてしまいます。
慢性化してしまった痛みを和らげるには、「体」だけでなく「脳」にアプローチすることが大切です。
参考文献
- Cognitive and emotional control of pain and its disruption in chronic pain
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Science15 Aug 1997.Vol 277, Issue 5328.pp. 968-971.doi:10.1126/science.277.5328.968 - Chronic Back Pain Is Associated with Decreased Prefrontal and Thalamic Gray Matter Density
Journal of Neuroscience 17 November 2004, 24 (46) 10410-10415.doi: 10.1523/JNEUROSCI.2541-04.2004 - Effective Treatment of Chronic Low Back Pain in Humans Reverses Abnormal Brain Anatomy and Function
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この記事を書いた人
中央林間カイロプラクティックオフィス 興津 尚之
カイロプラクター
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日本カイロプラクティック徒手医学会 正会員
マニュアルメディスン研究会 正会員
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