このページでは「心と体のケア」について詳しく説明していきます。このコースの予約を考えている方はよくお読みください。

心と体のケアの概要

体に不調が起きても、その原因が病院の検査で見つかるとは限りません。しかし原因が見つからなくても、その不調は実際に起こっています。そういった問題に対して、当院では機能神経学に基づいて、脳と体を繋ぐ神経ネットワークの機能を分析して原因を探ります。

機能神経学とは、体に起こる様々な問題を、脳と体を繋ぐ神経ネットワークの問題と考え、科学的に根拠のある検査やアプローチを用いて改善させるアメリカ発祥の自然療法です。

【精神的な問題の例】
不安障害・パニック障害・うつ病・落ち着かない など

不安や恐怖は、脳の扁桃体の過活動によって起こりますが、その扁桃体の過剰な働きを抑制するのは前頭葉になります。だから、前頭葉の働きが低下すると、不安や恐怖を感じやすくなります。このように精神的な悩みの場合、まずは前頭葉の働きを検査します。前頭葉は精神に関すること以外にも、眼球運動、体の動きの計画や実行、欲求の抑制、などの際に使われます。これらの機能を検査し、前頭葉の状態を分析します。またホルモンバランスも影響します。複数の検査(一つの検査で判断しません)や栄養状態を確認して、問題が見つかった場合、前頭葉の機能低下によって不安や恐怖を抑えられなくなっている可能性が考えられます。

【自律神経の問題の例】
息苦しい・呼吸が浅い・めまい・発汗・冷え・動悸・不眠・倦怠感・便秘や下痢 など

自律神経の乱れによって、光に敏感、呼吸が浅い、多汗、不眠、胃腸の問題などが起こります。自律神経の問題は、脳の視床下部、脳幹、末梢の自律神経、ホルモンバランス、栄養など、様々な問題によって引き起こされます。自律神経の検査では、瞳孔、発汗、呼吸の回数や肋骨の可動性、姿勢による血圧の変化、筋肉の張り、などチェックし、問診や脳機能・栄養に関するアンケートと合わせて客観的に分析します。例えば、便秘や下痢などの悩みであれば、胃腸の蠕動運動をコントロールしている迷走神経の働きを神経科学に基づいて検査します。そして問診でも迷走神経と関連のあることを伺います。腸の音(グル音)、喉の詰まり、飲み込みにくさ、など。これらを総合して胃腸の問題の原因を探ります。

【肉体的な問題の例】
意図しない体の動き(震え、振戦)・原因不明の痛み・感覚の異常 など

体の動きは大脳皮質の補足運動野、一次運動野、大脳基底核、小脳などがコミュニケーションを取ることで意図した動きが行えます。しかしどこかに問題が起きると、その動きが乱れたり、意図しない動きが起こったりします。感覚は頭頂葉の一次感覚野で場所や感覚(痛み、熱、鋭い、鈍いなど)を認識します。この神経の繫がりや認識に問題が起きると、通常、痛みと感じないような刺激を痛みとして感じたり、痛みの場所がハッキリわからなくなって広範囲に痛みを感じたりしてしまいます。動きや感覚に関する脳の機能、そこに繋がる神経経路を検査して問題がないかチェックします。

上記の例のように、脳や神経の機能に着目します。機能はレントゲンやMRI、CTなど画像検査では見つけることが出来ません。聴覚、視覚、平衡感覚などは病院で行う検査では機能の問題を見つけることは可能ですが、その問題が起きている原因まで分析することはほとんどありません。当院では、脳や神経のどの場所、どの神経ネットワーク、と言ったところまで突き詰めて原因を探ります。

対処方法

検査により、問題が起こっている場所や神経ネットワークが分かったら、その機能を改善させる方法を考えます。

対処方法は、筋肉や関節の調整、脳のトレーニング、五感(触覚・視覚・聴覚・味覚・嗅覚)を使った脳への刺激など様々で、一人一人症状に合わせて対処法を考えます。同じような症状でも効果的な対処法は一人一人違うので、クッキーカッターのように「この症状にはこの方法」という型はありません。

例えば、めまいの人で、意識的に目を動かすトレーニングが効果的な人もいれば、目を動かすと気分が悪くなってしまう人もいます。そんな人に、意識的に目を動かすトレーニングを続けることは出来ません。ですが、反射的(無意識)に目を動かすトレーニングなら、気分が悪くならずに行える可能性もあります。その人が出来ることや、効果的な方法は違ってくるので、同じような症状でも対処が異なることはよくあることです。そのため、対処法が実際に効果的かどうか確かめながら、いろいろな方法を試し、より効果的な方法を探します。

対処法は、手技や単純な器具を用いて行うものから、機器を使って行うものもあります。

実際に使う機器の一例です。

ここで紹介する機器は、アメリカをはじめ、カナダやオーストラリアなど様々な国で、機能神経学を用いた臨床を行うクリニックで使用されており、効果が報告されております。ただし、これら単体での利用で改善するとは限りません。その他の機能神経学的なアプローチと合わせることでその効果を発揮します。そのためには神経科学に基づいた検査を行い、いつ、どこで、どの段階で、どのようにこれらの機器を使うのか判断する必要があります。

【聴覚-視覚同調療法】(医療機器ではありません)


特定の周波数の音と光を出して、脳を特定の状態に誘導します。主に精神的な悩みや自律神経の悩みに対して、脳の興奮を落ち着かせるために使う場合が多いですが、午前中にこの機器を使ったり、何か重要なこと(会議やプレゼン、スポーツの試合など)の前に使って、集中力を上げり、活発に行動できるように脳の活性させるという使い方もできます。

脳波周波数状態備考
ガンマ波30~100Hz高い集中状態当院では使いません
ベータ波12~30Hz緊張・不安(βの中の高周波)
集中(βの中の低周波)
脳の活動を上げるのに効果的な可能性があります
アルファ波8~12Hz瞑想・リラックス脳の興奮を落ち着かせるのに効果的な可能性があります
シータ波4~8Hz浅い睡眠不眠に効果的な可能性があります
デルタ波0.5~4Hz深い睡眠不眠に効果的な可能性があります

※注意
この機器は脳をある特定の状態へ誘導することが目的であり、特定の疾患や病気を治すためのものではありません。これを使うことによって、症状が和らぐという報告は多数ありますが、脳が100%特定の状態になるとは限りません。また、てんかんの既往歴のある人には使用できません。

【モーションガイダンス】
レーザーポインターで体の動きの情報を視覚からフィードバックします。これによりイメージしている体の動きと、実際の動きのギャップを視覚から知覚し、修正することが出来ます。何度も同じところを怪我してしまったりする場合、このイメージの動きと実際の動きにギャップが起きていて、オーバーワークを起こしている可能性があります。また、同様の問題が首で起こると、めまいなどの平衡感覚の異常も引き起こします。

平衡感覚訓練

下の動画は膝の動きを改善するためのやり方の例です(英語)。

通い方について

脳には可塑性という特性があります。脳の可塑性とは刺激によって、構造的にも機能的にも変化することです。この可塑性を引き起こすためには、繰り返し刺激を入れる必要があります。そのため初回から5回目までは出来る限り頻繁に来ていただき(1週間に1~3回)、その段階で最も効果的な対策を見極めるようにします。そして、その後は自宅で行えるセルフケアを指導し、ご自身で頻繁にトレーニングを行ってもらいます。出来る限りご自宅でのセルフケアで対処していただき、通う回数を減らせるように考えますが、症状によっては頻繁に受けていただくことをお勧めする場合もあります。

【可塑性の例1】
自転車に乗るという行為について。初めて自転車に乗るとき、いきなりうまく乗れる人はほとんどいません。なぜうまく乗れないかと言うと、バランスの取り方や体の使い方が分からないからです。しかし、何度も練習していると、どんどん上達して乗れるようになります。これは練習を繰り返したことで、手はどう動かせばいいか、足はどう動かせばいいか、バランスを取るためにはどうすればいいか、など、体の使い方を脳が学習して、脳-神経-体の繋がりが最適な状態に変化し、自転車に乗るという機能を獲得しています。

【可塑性の例2】
勉強について。勉強の多くは記憶する必要があります。その記憶を使って答えを導き出します。数学では公式を、英語では文法を。初めの内は、覚えたことを記憶の中から探すという作業を行います。そして思い出した公式や文法を使って答えを導きます。ですが、この考える、思い出す作業には時間がかかります。しかし、何度も何度も勉強していると、考える、思い出すという作業に時間がかからなくなり、パッパッと答えが出てくるようになります。これは、何度も思い出すことによって、その記憶に繋がる神経の経路が最短で導き出されるように最適化されるからです。それによって計算が出来るようになったり、英語が話せるようになったりします。


このように脳は刺激を繰り返すことによって、物事に適応することが出来ます。これが脳や神経の特徴の可塑性です。