椎間板ヘルニアなどの神経痛と間違われる7つの筋膜痛

神経痛

筋膜痛または筋・筋膜性疼痛症候群という言葉を聞いたことはあるだろうか。

筋膜という言葉は、数年前からメディアなどでも取り上げられるようになってきたので聞いたことがある人も多いはず。筋膜痛または筋・筋膜性疼痛症候群(以降は筋膜痛で統一します)というのは、いわゆる筋膜によって引き起こされる痛みやしびれのことです。

メディアなどで筋膜を「全身を覆うボディスーツのようなもので、一か所が縮むと他の部分にも影響が出る」という風に言われていると思います。

実際は、ある法則に則って筋膜は影響を及ぼします。これについてはThomas Myers著の「アナトミートレイン・徒手運動療法のための筋筋膜経線」という本が最も優れていると思います。ただ、専門書ですので一般の人には難しいかもしれませんが、図を見ているだけでもとても参考になると思います。

少し脱線しますが、メディアで筋膜という言葉が使われるようになった後から、今までは普通に「ストレッチ」と言っていたものに、「筋膜」という言葉を付け加えて、ただのストレッチ動画や書籍をあたかも筋膜をストレッチしているかのように見せかけているものが多く出回るようになりました。正直、ネットで調べて見つかるのは、ほとんどが普通のストレッチです。

話を戻します。

実はこの筋膜痛は、筋肉自体の故障と違って、広範囲に渡って痛みやしびれを出すという特徴があります。そして、この特徴が神経痛に似ていることから、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などの神経痛と誤って診断されることがあります。実際には※ベッドサイドの検査を行うことで神経痛と区別することができますが、レントゲンやMRIの画像検査ではそれを区別することができません。

※ベッドサイドの検査:整形外科学検査、神経学的検査で、反射の検査(腱を叩く、例:脚気の検査)、筋力検査(力がしっかり出せるか)、感覚(振動や触れられた感覚、チクチクする痛みの感覚)の検査、など。これらは、高度な検査器具を必要とせず、それでいて、高い確率で神経の異常を見分けることができます。

はじめに

ここで紹介するのは筋膜痛がこういった痛みやしびれを出すことがあるという例です。病院で検査を受けていないのに、ここで紹介する症状に似ているからといって自己判断はしないでください。ちゃんと診断を受けていて、さらにドクターの言う通りに治療や運動を行っているのに、いつまでも治らない人は、一度、筋膜痛を疑ってみても良いと思います。

筋膜とは

筋膜は筋肉の表面を覆っている膜で、コラーゲン線維で出来ています。覆っているといっても、筋膜は複雑に絡み合う網のようなものなので、筋肉と筋膜を完全に分離することはできません。みかんの白いスジをイメージしていただくと分かりやすいかと思います。しかも、みかんの白いスジって、一つの房だけでなく、隣り合う房にも絡み合ってくっ付いてたりしますよね。筋膜も似ていて、隣り合う筋肉の筋膜と絡み合い、互いに影響を及ぼします。

トリガーポイント

長期にわたり筋肉に負担がかかり続けると、凝り固まり、硬結(しこりのように硬くなる)が出来ます。これをトリガーポイントと呼びます。そしてこのトリガーポイントを押したりして刺激すると、広範囲にわたって痛みやしびれを出します。広範囲に痛みやしびれを出すということから、神経の障害にとても似ていますが、症状の出る場所やその他の神経症状が伴わないなど、神経生理学では説明がつきません。それを説明するのにもっとも有力なものが「筋膜」と言われています。

手・腕・肩・首に出る筋膜痛

手・腕・肩・首に出る筋膜痛は、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症、胸郭出口症候群などと間違われることがあります。

斜角筋

左右の首の横にある筋肉で、首を横に倒す際に働く筋肉。この筋肉は筋膜痛だけでなく、神経や血管を圧迫して肩や腕、手に痛みやしびれを出す胸郭出口症候群という神経痛の原因にもなります。その判別もしっかりとしなければなりません。

棘上筋

肩甲骨の上部にある筋肉。脇を開くように腕を横に広げていく際の初動に働く筋肉。この筋肉の問題を放っておくと肩関節周囲炎と言う、いわゆる四十肩や五十肩の原因になる可能性があるので注意。

小胸筋

大胸筋のさらに深部にある筋肉。肩が前に丸まっていると、この筋肉は縮んで硬くなりやすい。斜角筋と同様、この筋肉も神経や血管を圧迫して肩や腕、手に痛みやしびれを出す胸郭出口症候群という神経痛の原因にもなります。

腰・お尻・足に出る筋膜痛

腰・お尻・足に出る筋膜痛は、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、坐骨神経痛、梨状筋症候群などと間違われることがあります。

腰方形筋

肋骨と骨盤を繋いでいる筋肉で、腰を反らしたり、骨盤を引き上げる際に働く筋肉です。座っている時に足組をしたり、骨盤が傾いたり捻じれた状態だと影響を受けやすい筋肉です。

小殿筋

体(骨盤)のほぼ側面の深部にある筋肉。股関節を横に開いたり、内や外に捻じる時に働く筋肉。この筋肉は間欠性跛行を起こしたりもして脊柱管狭窄症と間違われることがあります。

坐骨神経痛

梨状筋

お尻の深部にある筋肉。股関節を外側に捻じる働きのある筋肉。この筋肉は筋膜痛だけでなく、坐骨神経を圧迫してお尻や足に痛みやしびれを出す梨状筋症候群という神経痛の原因にもなります。その判別もしっかりとしなければなりません。

ハムストリングス

太ももの後ろの筋肉。膝を曲げる際に働く筋肉。ハムストリングスは大腿二頭筋と半腱腰筋、半膜腰筋の3つの筋肉を合わせた総称です。デスクワークなど、長時間イスに座っていることが多いと血流が悪くなり症状を引き起こす原因になります。

まとめ

神経痛と間違われることの多い筋膜痛を7つ紹介しました。他にも神経痛と間違われる筋肉がありますが、全て紹介すると切りが無いので、当院でよくみられる症状に絞ってみました。

神経痛か筋膜痛か区別するには、以前書いた「治療家も知らない!腰椎4-5間の椎間板ヘルニアで脛に症状が出る理由。」をご覧ください。

筋膜痛について、少しずつ周知されるようになってきて、現在では医師の中でも「椎間板ヘルニアのほとんどは誤診」と仰る先生もいます。

それでもまだまだ筋膜痛なのに神経痛の治療を行っている人がたくさんいます。そんな人たちが少しでも早く、正しい治療を始められるようになればと思い今回この記事を書きました。