自宅でも出来る!ADHDの子のトレーニング

発達障害

脳の働きで、社会性やコミュニケーションに重要になるのは前頭葉と呼ばれる脳の前側の部分です。ADHD(注意欠如多動性障害)の子の前頭葉の働きをチェックしてみると、そうでないこと比べると大きな差がみられることがあります。当院では、脳の機能が未発達なのは、刺激が不足しているからだと考えています。そのため、ADHDの子の脳の機能が未熟な部分に対して、適切な刺激を入れることで脳の発達を促しています。

前頭葉の働きと眼の動き

前頭葉を発達させるということは、社会性やコミュニケーション能力を高めてくれます。前頭葉には以下のような働きがあります。ADHDの子のご両親の悩みに当てはまりませんか?

  • 衝動の制御
  • 情動の制御
  • 理性・倫理
  • やる気
  • 運動の制御
  • 整理・順位付け

そして、眼を動かす指令は前頭葉(前頭眼野)から起こります。このことから、前頭葉の状態をチェックする方法の一つとして、眼の動きを観察します。ただし、眼の動きだけで前頭葉の状態を判断することはありません。その他にも色々な検査、行動分析などの結果と合わせて考えます。

我慢ができない、ジッとしていられない

ADHDの症状には、我慢ができない、落ち着きが無く常に動き回る、整理できない、作業手順が覚えられない、などがあります。これらの働きに関わる脳の部分は前頭葉になります。

サッケードとアンチサッケード

ADHDの子に対して、必ず眼の動きを検査します。その検査の一部がサッケードとアンチサッケードです。

下に黒い点が2つあります。それを交互に見てください。この様に、視点を急速に移動させることをサッケード(急速眼球運動)といいます。
たとえば、公園のベンチに座って景色を眺めているとき、目の前に猫が急に現れれば、その猫を見てしまいますよね。その他にも、本の文章を上から下に読み、次の行に移動する際に、上へ瞬時に視点が移動する目の動き。これらの目の動きもサッケードです。つまり目標物へ視点を瞬時に動かして、その物をジッと見ることです。もしこれが出来ないと、集中して1点を見つめることが出来ず、キョロキョロと落ち着きがなく目が泳いでしまいます。

次に、アンチサッケード。これは視覚刺激とは反対に眼球を動かすことです。

分かりやすく「あっち向いてホイ」を例に説明します。あっち向いてホイはジャンケンで勝った人が、負けた人に対して「あっち向いてホイ」という掛け声とともに上下左右のいずれかの方向を指差し、負けた人はその示された方向とは別の方向を向く遊びです。これを応用し、方向が示されたのを見てから、出来るだけ素早く、その方向とは反対側に眼球だけを動かします。これがアンチサッケードになります。

人は、視野内に動く物があれば、無意識にそちらに視線を動かします。上の例でも上げていますが、公園のベンチに座って景色を眺めているとき、目の前に猫が急に現れれば、その猫を見てしまいます。しかし、前もって「猫が表れても見ないでください」という指示を受けていたらどうでしょう?ほとんどの人は、猫が表れても、たとえ見たいと思っても、それを我慢して見ないでいることが出来ますよね。もしこれが出来ないということは、衝動を抑制(我慢)することが出来ないということですよね。

サッケードのトレーニング

下の図の、左から右(またはその逆)へ、視線だけで線を追ってください。この時に、頭を動かしたり、指で線をなぞったりしないでください。

図をクリックすると拡大された物が表示されるので、印刷して使ってください。

学習障害と眼の動き

勉強が苦手、ノートを取るのが遅い、などで悩んでいる子の眼の動きをチェックしてみると、輻輳や開散運動が出来てない子が少なくありません。このことが学習障害の原因の一つとして考えられます。

輻輳運動と開運動散

輻輳とは、左右の眼球を、鼻に近付けるように動く眼球の動きで、いわゆる寄り目です。遠くから近くの物に焦点を変える時に起こる眼の動きです。
開散とは、輻輳とは逆の動きで、左右の眼球がそれぞれの耳の方向へ動く眼球の動きのことです。近くから遠くの物へ焦点を変える時に起こる眼球の動きです。

学校の授業と視線の動き

なぜ、これらの眼の動きが出来ないと学習障害が起こるのかというと・・・。
学校や塾で、勉強ってどうやってしますか?
先生が黒板に板書した文字を見て、ノートをとったり、教科書と黒板を交互に見たり、ということをしませんか?この時の眼の動きを考えてみてください。
ノートや教科書に視線を置く時は、近くの物に焦点を合わせるために、少し寄り目(輻輳)をした状態です。そして、黒板を見る時(席の場所にもよりますが)は、遠くに焦点を合わせます(開散)。
この二つの眼の動きがスムーズにできないと、どうなるでしょう。視線を変える度に焦点が合わない。一生懸命、焦点を合わせようと頑張っているうちに、どんどん授業が進んでいく。ノートをとる余裕がなくなる。と、いう様な状況になりかねません。
だから、この二つの眼の動きはとても大切なんです。

輻輳運動と開散運動のトレーニング

輻輳と開散がとても重要だということは分かってもらえたと思います。そこで、上手く出来ない子に簡単にできるトレーニングをお伝えします。

用意するもの
・テニスボール1個
・1m位の紐
・ねじ付フック
上の3つを写真のように取り付けます。これを子供の前で、振り子のように前後に振ります。このボールを眼で追うことで、近づいてきた時に輻輳運動、離れていく時に開散運動が起こります。ただ、これだけだとちゃんと焦点が合わせられているか分からないので、少し工夫しましょう。例えば、ボールにシールを貼ったり、文字を書いてそれを読ませる、とか。他にも何かご自分で考えてみてください。

注意
輻輳・開散運動が出来ない理由が、眼球を動かす筋肉や神経自体に問題がある場合は、このトレーニングでの改善は難しいです。両眼球を(左右の眼が同じ方向に動くように)上下、左右、斜めに動かしてみてださい。子供に行う場合は、親が子供の顔から30cmほど話したところに指を1本立てて、その指を動かして、それを目で追ってもらってください。眼球が動かない方向があれば、その問題を先に解決しなければなりません。場合によっては病院で検査する必要があるかもしれません。

まとめ

輻輳や開散運動、サッケードやアンチサッケードなど、眼の動きのトレーニングを行うことで、前頭葉を働かせることが出来ます。ADHDだけでなくADS(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)にもこの眼球運動に問題がみられます。また、発達障害ではない子でも、衝動の制御・情動の制御・理性、倫理・やる気・運動の制御・整理、順位付け、などで気になる子がいたら、眼の動きをチェックしてみてください。眼の動きのトレーニングをすることで、何か変化が起こるかもしれません。

ここで、紹介していることは、発達障害に対する検査やトレーニングのほんの一部です。実際は、たくさんの検査や分析を行い、その結果に基づいて、一人一人に合ったトレーニングを行います。今回紹介した眼の動きのトレーニングも、その子の脳の状態に合わせてやり方を変えて行います(例えば、右から左に眼を動かすことを多めにする子と、その逆を行う子)。

当院の発達障害に対する方針などは「発達障害の子に不足しているのは刺激」をご覧ください。