20年以上続く頭痛の原因を考える【ケーススタディ】

先日参加した神経学の講座で行った、頭痛に関するケーススタディ。そこで、どのようにして原因を探っていったのか、復習を兼ねてまとめてみたいと思います。このケーススタディは実在する人のケースになるため、個人情報に配慮する必要があります。そのため症状やその原因に影響が出ない範囲で、プロフィールやエピソードを一部変更しています。またここで出てくる問診や検査は、頭痛の治療を目的としているのではなく、科学的に根拠のある検査によって見つかった、筋骨格、脳、神経、などの機能的な問題を改善することを目的にしたものになります。いかなる病気を診断、治療するためのものではありません。

多くの治療家が、頭痛に対して筋骨格系にしかアプローチしませんが、それだけで良くなる人ばかりではありません。この記事を読んでいただければ、その理由がわかると思います。頭痛は筋骨格の問題だけでなく、脳や神経も影響し、複雑に原因が絡み合って起こっていることがあります。

頭痛に関して聞き出した情報

30代 男性 仕事:精密機器の操作(オペレーター)

主訴:頭痛

どんな頭痛ですか?

  • 頭全体がガンガンする(左右差はない)
  • 目の奥に痛みが出ることもある
  • 視界がチカチカすることもある(フラッシュのような感じ)
  • 一度出ると一日中続く
  • 気圧の影響を受ける
  • パソコンのモニターをずっと見ていると悪化する
  • 仕事中に頭痛が出ると、仕事が手につかなくなる
  • 休日に頭痛でその日の予定を取りやめることがある
  • 頭痛で仕事を休んだことがある

頭痛が起きるようになったきっかけは?

  • 子供のころ自転車で転倒して頭を強打し、そのあとから頭痛が始まったような気がする。
  • 青年期に、交通事故に遭い、そのあと症状が悪化した。
  • 青年期に、立ち上がった際に意識を失い後ろ倒れ後頭部を強打。

緩和する要因はありますか?

頭痛が出ると薬を飲む。それで軽減することが多いが、効かないときもある。それ以外での緩和方法はない。

仕事に関して

  • 一度作業に入ってしまうと12時間以上、席を外せないことがある
  • 長時間パソコンの画面を見ていることがある
  • 非常に集中を要する仕事
  • 夜勤がある

主訴以外の症状

  • 吐き気
  • 睡眠不足
  • 胃腸の調子は良くない・脂っこいものを食べるの下痢になる。
  • 首が凝る
  • 寝つきが悪い・夜中に何度も起きる
  • 歯ぎしり
  • 汗をかきやすい

得られた情報から問題部位を考える

クライアントから聞き出した情報で重要な情報を赤字で書きます。そして脳や体の部位に対応させられるところを【】内に記入していきます。

どんな頭痛ですか?

  • 全体ガンガンする【自律神経】
  • 目の奥に痛みが出ることもある【三叉神経・脳幹・頸椎】
  • 視界がチカチカすることもある【眼・後頭葉】
  • 明るい日に出ることが多い・サングラスをしていると軽減する【眼・後頭葉】
  • 一日中続く
  • 気圧の影響を受ける【自律神経】
  • パソコンのモニターをずっと見ていると悪化する【眼・後頭葉】
  • 仕事中に頭痛が出ると、仕事が手につかなくなる
  • 休日に頭痛でその日の予定を取りやめることがある
  • 頭痛で仕事を休んだことがある

頭痛が起きるようになったきっかけは?

  • 子供のころ自転車で転倒し頭を強打し、そのあとから頭痛が始まったような気がする。【頸椎】
  • 青年期に、エアバックが飛び出すような交通事故に遭い、そのあと症状が悪化した。【頸椎】
  • 青年期に一度だけ、立ち上がった際に意識を失い後ろ倒れ後頭部を強打。【自律神経】

主訴以外の症状

  • 吐き気【自律神経(延髄)
  • 睡眠不足【脳幹・松果体・自律神経】
  • 寝つきが悪い・夜中に何度も起きる【脳幹・松果体・自律神経】
  • 胃腸の調子は良くない・脂っこいものを食べるの下痢になる【自律神経(延髄)】
  • 首が凝る【頸椎・脳幹】
  • 歯ぎしり【脳幹(中脳)】
  • 汗をかきやすい【自律神経】
  • 動揺性のめまい【脳幹・小脳・頸椎】

このようにまとめた結果、頸椎・脳幹・自律神経の問題を多く抱えていることが分かります。動揺性のめまいがあるため、脳血管障害の可能性も考えられるが、それらについては病院で検査を受けているため除外しています。立ち上がった際に気を失ったことがあるということで、体位性頻脈症候群(POTS)の可能性も考えられるが、転倒は一度だけなので可能性は低いと思われる。

これらの情報をもとに、今度はそれぞれ問題が起きている部位の機能の検査を行い、さらに原因を絞っていきました。

今回のケーススタディでは、検査から見えてきた問題に対して、その場で出来る方法でアプローチして、再度検査を行って変化を確認しました。本人も状態の変化を実感していました。しかし、一回だけの調整で完全に良くなることはありません。そういったことについてもちゃんと科学に基づいた説明をして、今後、どのようにするべきかアドバイスしてケーススタディは終わりました。

まとめ

整体院やカイロプラクティック院で「頭痛に対応できます」と謳っているところはたくさんあると思います。しかし、頭痛の本当の原因を探るためには今回の記事のように、非常にたくさんの情報が必要で、その情報を分析するための知識も必要になります。

たまたま首の歪みを調整したら「頭痛が良くなった」では、クライアントはうれしい事でも、治療家としてはダメです。そのようなやり方では、同じような症状で来たクライアントの首を調整をして、良くならなかった場合、その理由が分からず、効果的な手段を取ることが出来ません。治療家の中には、頭痛の原因は「首」というように短絡的に考える人が実際にいます。そして良くなる人もいることは事実ですが、それだけでは改善しない例もたくさんあります。重要なのはちゃんと論理的に説明できる原因を見つけてあげることです。そうすればきっと頭痛で悩んでいる多くの人の役に立てるはずです。

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